ボルボV60は、2018年にフルモデルチェンジして日本でも販売されている人気のモデル。1990年代にボルボの人気を決定づけたボルボ850・ボルボV70 の伝統を受け継いだステーションワゴンタイプです。
この記事では、ボルボV60のメカニズムの中でも、シャシー(車の足回りにおける機構)とセーフティー機能に焦点を当てて詳しくご紹介いたします。
ボルボV60のシャシーのメカニズム
ボルボV60のシャシーは、前後共にユニークな構造で、安定性と快適性を両立しているという特徴があります。
プラットフォーム
V60のプラットフォームは基本的にXC60と共通で、採用されているメカニズムも同じです。ホイールベースはV60の方が5㎜長いのですが、車高合わせでサスペンションが微妙に動き、四捨五入の境目に当たったからと考えられます(国土交通省への届け出の際は5㎜単位とされています)。
最低地上高の差は70㎜ありますが、タイヤ半径の差が約40㎜なので、残りの30㎜をサスペンションの空車角で補っている計算となります。
サスペンション
V60に限らずSPAのサスペンションは独特で、フロントにダブルウィッシュボーンを、リヤにはインテグラルアクスルに加え、横置きリーフスプリングという形式を採用しています。一般的には、パワーユニットが幅を取り、アッパーリンクのレイアウトが難しいために、横置きエンジン車はフロントサスにダブルウィッシュボーンを採用することは少ないのです。
ダブルウィッシュボーンをV60に採用するメリットとしては、乗り心地が良くなることです。キングピン軸を外に出し、キングピンオフセットを縮小してトルクステアやフラッターを軽減するために、アッパーリンクはタイヤの上に出るハイマウント式。ロワボールジョイントもなるべく外に配置するために、ナックルの下部を二股に割った間にボールジョイントを配置しています。
サスペンションを側面から見ると、アッパーリンクの揺動軸が“迎え角”を持っていることがわかります。ホイールストロークの軌跡を“後ろ下がり”にすることが狙いで、バンプストローク時に後方に逃げながらストロークすれば、前後ショックも逃すことができるのです。
スプリング
V60のスプリングは、アクスルの後方にGFRP製のリーフが横置きに配置されています。もしコイルスプリングで十分なストロークを確保しようとすれば高さ方向に場所を取り、乗り心地を良くするためには巻き径を大きくする必要があります。
これらはいずれも、ラゲッジスペースを侵食する要因となりますが、一枚板のリーフスプリングであれば、どちらも回避することが可能です。ワゴンづくりにこだわるボルボならではの設計と言えるでしょう。
ブレーキローター
V60に採用されているブレーキローターは、前後ともにベンチレーテッド式です。フロントはΦ340㎜×t30㎜、リヤはΦ325㎜×t20㎜と、スポーツカー並みに大きなものがついています。このことにより、強力なストッピングパワーで高い安心感を得ることができます。
ボルボV60セーフティー機能のメカニズム
現在では当たり前となりつつある自動ブレーキシステムですが、完全に停止することを世界中で初めて実現したのはボルボです。
新型V60には、ボルボ全車に標準装備されている衝突回避・被害軽減ブレーキシステムの“シティセーフティ”に加え、運転支援機能を包含する“インテリセーフ”も標準装備されています。
前方の状況確認システム
車の前方の状況を確認するために、二つの特性があるミリ波レーダーと、1基のカメラを採用しています。これらが一体化されたもの(ASDM=Active Safety Domain Master)が、ルームミラーの裏側に設置されています。
- レーダーの特徴
ミリ波レーダーの周波数はいずれも76GHzですが、一つは広角近距離、一つは狭角遠距離用に設定されています。 - カメラの特徴
カメラの角度も拡大され、旧仕様が38.3度であったのに対して、52度まで広角化を実施しています。またカメラの解像度は旧仕様の4倍となり、物体の識別性能を飛躍的に向上させています。
レーダーとカメラはデータフュージョンしていて、物体に対して一方をメインに使用し、もう一方を確認用に使用しています。またレーダー波を反射しやすい車はレーダーをメインに、歩行者や自転車、大型獣などはカメラ画像をメインにしたパターンマッチングを行い、識別しています。
ただし、大型獣を正確に識別することはまだ難しいようです。大型獣以外の対象物への自動ブレーキ作動時の最大減速度が約1Gであるのに対し、大型獣に対する最大減速度は0.3Gに留まっています。また、衝突前停止は担保されていません。
大型獣を自動ブレーキだけで回避することはできないことが予想されるだけでなく、ドライバーがステアリングで回避行動を始めると、電動パワーステアリングを使って操舵アシストが介入します。同時に左右のブレーキバランスを調整し、回避方向にヨー運転を発生させる制御を行います。
後方監視システム
後方には、リヤのバンパーコーナーに76GHzのミリ波レーダーを装備しています。後方約70m、側方3.5mに及ぶ検出可能エリアに並走車両が入ると、ドアミラー鏡面の外側に設置されたオレンジ色のワーニングランプが点灯します。
ただし、ドアミラーが後方にあるので、ワーニングランプが視野に入りにくい傾向があります。特に小柄でスライドが前方になる人の場合は特に見えにくいことが想像できます。
リヤのミリ波レーダーは、後退出庫時に死角から接近する車両・歩行者・自転車などを検知するCTA(Cross Traffic Alert)と、追突される可能性があるときに自動的にハザードランプを高速点灯させる被追突時警告機能にも利用されています。
- 星野邦久 ボルボV60のすべて 株式会社三栄書房 平成30年12月1日発行
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